子育て大学 No.3
■視線が合いにくい子どもへの応用■(2002年7月8日)
今回は、なかなか目が合わない子どもに対して、これまでに紹介してきたくすぐり遊びを役立てる方法を紹介します。発達障害をもつ子どもの場合、幼児期に視線が合いにくかったと養育者から報告を聞くことがあります。視線を合わせることも行動ですから、それならばこれはそれほど難しい問題ではありません。まずは、これまでに述べてきたように、子どもにとってくすぐり遊びが楽しいやりとりでなければなりません。具体的には、前回紹介した程度、つまり子どもからくすぐり握手を求めて手を伸ばしてくるようにしておく必要があります。今までは、子どもから手を伸ばしてきたらすぐにくすぐりを与えていました。視線を合わせるためには、今までくすぐりを与えていたポイントでくすぐりを与えずに完全に動きを止めるのです。たとえば、今までなら「階段のぼって、コチョコチョコチョ…」とやっていたのを、「階段のぼって」で一時停止するわけです。この一時停止状態で、子どもが大人の顔や目を見るまで数秒から数十秒ほど待ちます。この一時停止中、子どもが大人の顔を見たり目が合ったりしたら、0.5秒から1.0秒以内に一時停止を解除して即座に「コチョコチョコチョ…」とやるのです。これを上手く繰り返しましょう。念のため、繰り返しておきますがこの手続きが奏功するためには、子どもにとってすでにくすぐり遊びが楽しいやりとりになっていることが前提になります。楽しい雰囲気でアイコンタクトが成立するよう心がけてください。
■飛行機の中でのこと■(2002年7月26日)
この間、飛行機に乗っているとき、隣の若いお母さんが1歳ぐらいの子どもを寝かせられなくて困っている場面に出くわしました。子どもの様子は、空腹やおしめの濡れで泣いている感じではなく、眠気からむずがっている感じでした。お母さんは子どもを抱っこした状態で子守歌を歌いつつ上下に揺らしながら背中をトントン、トントン叩いてあやし続けていました。ところが、子どもがそろそろ眠りに落ちそうな感じになると、またむずがって泣き出します。このまま約1時間、とうとう目的地に到着するまで子どもを寝かしつけることができませんでした。お母さんも努力してはいるのですが、なかなか報われないようでやつれ果てている様子ですし、周囲にいる乗客にもその辛さが響いています。こうした課題についても、子どもを寝かしつけるための工夫があるのではないかと思います。具体的なことは次回に。
■眠らせ上手-基礎編-■(2002年7月31日)
幼い子どもを寝かしつけるのには根気が必要です。子どもがなかなか寝ついてくれなければ、養育者のストレスも高くなるでしょう。大人も子どもも入眠するためには、それぞれに合った状況づくりが重要となります。入眠できる(しやすい)状況ですね。衣服やおしめの状態、室温や湿度なども入眠しやすい状況とそうでない状況があります。
さて、幼い子どもの場合、最も子どもが安心するウトウトしやすい姿勢で抱っこしてやることが大事です。キャッキャと興奮してしまう姿勢では困難です。中にはオンブされているほうが安心できる子どももいるでしょう。その状態で、子どもの背中をやさしくトントンしたり撫でてやったりします。ここで重要なのは、トントンのリズムや撫でるスピードを子どもの状態に合わせて徐々にゆっくりすることです。子どもの状態に合わせる秘訣は、子どもの呼吸を手がかりにすればよいかもしれません。とにかく子どもに合わせるのが重要で、養育者の好き勝手なリズムで「ヨシヨシ、はいはい。トントントン・・・」としないことです。子どもの「スヤスヤ度」に合わせたタッチが有効です。次回は応用編を。
■眠らせ上手-応用編-■(2002年8月9日)
さて、ぐずる子どもの寝かせ方の基本は、上に述べました。上に述べたことを出来る限り配慮した上で、さらにひと工夫こらしてみる必要があるときには次のことを試してみてください。わたしはこれを「やわらかタオル法」と名付けているのですが、子どもを抱っこする前に、養育者と子どもが接する部分にバスタオルぐらいのサイズで子どもが好む材質のタオルを敷きます(たいていの子どもは柔らかい材質のものを好みます)。抱っこの場合は養育者の太股あたりから胸のあたりに、オンブの場合は背中に1枚という感じです。養育者はこのタオルをはさんで抱っこやオンブをすることになります。子どもにとっては、これまで同様、気持ち良い安心できる状態で養育者に抱っこされていることになるのですが、そこに「やわらかタオル」があるだけで、次第にタオル自体が安心感を与える養育者代わりになっていくのです。子どもがウトウトしたら、そっとタオルにくるんだまま寝かせると良いでしょう。幼い子どものぐずりに悩む方は、この「やわらかタオル法」を試してみてください。
■夜泣きの意味■(2002年9月18日)
赤ちゃんの夜泣きは養育者のストレスの原因になりやすいです。若い養育者にとっては、この夜泣きがいつまで続くのか不安を感じてしまう方がたくさんおられます。また、密集した住宅で生活しておられる家庭では、必要以上に隣近所に気を遣ってしまってさらにストレスが高まるかもしれません。本当に夜泣きは養育者にとって困った問題です。でも、ちょっと待ってください。この泣くことは赤ちゃんにとって、とても重要な活動なのです。話し言葉がまだない赤ちゃんにとって、泣くことが自分の要求を伝えるコミュニケーション手段となっているのです。赤ちゃんがもう少し大きくなるまで、養育者にとっては辛い時期かもしれませんが、成長するにしたがって泣き以外の要求伝達方法を子どもは学んでいきます。夜泣きが盛んな赤ちゃん時代を通して、子どもは人間との基本的なコミュニケーションを学んでいきます。そして「愛着」が形成されていくのです。
■夜泣きの意味2■(2002年10月20日)
育児ストレスが高くなったお母さんが「うちの子、まるでわざと嫌がらせようとして泣いているみたいな気がしちゃうのですが」と相談してくることがあります。夜泣きが頻繁だとそういう感じがしてしまうのも仕方がないことかもしれません。でも、子どもが「わざと」をやるようになるのはもう少し大きくなってからの話です。泣いている赤ちゃんの気持ちを、次のように感じてみてはどうでしょうか。「ぼく(わたし)の大好きな人、おっぱいちょうだいよー」「ぼく(わたし)の大好きな人、おしめ変えてよー」「ぼく(わたし)の大好きな人、だっこしてよしよししてよー」などです。これらの要求をかなえてあげて泣きがおさまったなら、赤ちゃんが「ぼく(わたし)の大好きな人、ありがとう。いっぱい大好きだよ」と言ってるように感じてください。もちろん、泣いて訴えるしかできない赤ちゃんからすれば、泣くことで要求がかなうわけですから、泣いて要求することが増えるでしょう。でも、養育者としてはまず赤ちゃんの訴えを上のように理解してやることが大切です。