奥田研究室 / Kenji Okuda's Lab
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コラム


子育て大学
子育てについて真剣に考え、取り組んでいくために開設しました。
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子育て大学 No.2

■子どもをあやす■(2002年1月13日)
 年末年始の新幹線は子連れの客が多いものです。この間、出張に行くときに乗った新幹線でのエピソードを紹介します。1歳くらいの幼児が泣き始めました。この「泣き」は癇癪ではない生理的な「泣き」であると思われました。母親があやしてもなかなか泣きやみませんでした。すると、父親がこの子を抱っこしてデッキに移動しました(まずは父親の社会性に拍手)。それから5分ほどして父親はスヤスヤと子どもを寝かせて帰ってきたのです。なかなか良い父親ですね。私も年の離れた妹の世話をしていたとき、よく「子どもをあやすのが巧い」と言われたものです。この「子どもをあやすのが巧い」ということを具体的に考えると、「子どもをすぐに笑わせることができる」「子どもをすぐに泣きやますことができる」ということを含んでいるといえるでしょう。次回、より具体的なコツをお話しします。

■焦らすわけではありませんが、その前に...■(2002年2月17日)
 前回、「子どもをすぐに笑わせること」「子どもをすぐに泣きやますこと」と書きましたが、「子どもを泣きやます」ための手っ取り早い方法は「笑わせること」なのです。いかに笑わせられるかという方法について考えてみる必要があるわけです。人間は同時に複数の生理的状態をもてないものです。たとえば、緊張と弛緩(リラックスした状態)は同居できない生理的状態の組み合わせの一つだといえます。強烈な痛みによって引き起こされている「泣き」の場合はそう簡単にはいきませんが、多少の「泣き」ならば思いっきり笑わせることで泣きやみます。このアイディアに対して、「やってみたけど泣きやまない」とか「非現実的」という批判があるかもしれません。ですが、そんなことはありません。それは「笑わせ足りていない」だけなのです。泣いている子どもを上手に泣きやましたことのある人なら、子どもが今まで泣いていた名残(なごり)をとどめながらも、たとえばまだヒックヒックしていたり、まだ両頬を涙がつたっていたりしながらでも、ケタケタ笑っているうちにご機嫌になっていくことを経験しているはずです。次回こそ、具体的に笑わせる方法についてお話しします。

■くすぐってみよう■(2002年3月16日)
 さて、「くすぐったさ」という状態は、皮膚感覚上のくすぐり刺激だけで生じるものなのでしょうか。答えは否です。最初はそうかもしれませんが、くすぐるほうとくすぐられるほうとの関係によって変わってきます。くすぐり遊びを何度も経験したことのある子どもなら、お母さんがくすぐろうとしただけで、くすぐったそうに笑うようになります。まだ子どもをくすぐってないのに、子どもは「くすぐったさ」を感じているわけです。子どもの泣きをあやすために、普段からこの関係を十分に作っておきましょう。そのとき、ただくすぐるだけでなく、儀式的な手続きを入れておくのがポイントです。儀式的な手続きとは、たとえばくすぐり手遊びのときの声かけだったり、オリジナルなものだったりしてもよいのです。とにかくすぐに子どもをくすぐるのではなく、「これからくすぐるぞ〜」ということが伝わるようにすることが肝心です。実際にくすぐるときには、いきなり脇や首筋を触るのではありません。子どもにまず両腕を伸ばさせ、手の甲あたりからじらしながら少しずつくすぐりポイントへ近づけていって、一気にくすぐりましょう。もし、子どもが強く拒絶するならば、くすぐり方(強さ、スピード)や、くすぐりポイント(脇、首筋、脇腹など)を変えたり、導入のときの儀式的な手続きを変更したりしていく必要があります。子どもの様子をみながら、実践してみましょう。

■くすぐりを始める手がかりとなる声かけ■(2002年4月10日)
 前回、子どもを単にくすぐるだけでなく、儀式的な手続きを使って「これからくすぐりが始まる」ということを、子どもに分からせるような手がかりとなる声かけをすることが重要だということを述べました。この儀式的な手続きには、むかしから色々な種類のものがありますね。また、その地方地方によって独特のものもあるようです。いわば伝承遊びともいえるかもしれません。たとえば、「やーおーやーのつーねこさんが...」という遊びは、子どもの手を握って腕を伸ばさせるところから始めます。「階段のぼって...」のときに、子どもの手の甲から肩のほうへ向けてじらしながら2本の指でテクテク歩いていきます。「コチョコチョ...」で目一杯、子どもの脇をくすぐります。この手続きを繰り返すだけで、「やーおーやーの」を始めようとしただけで子どもはゾクゾク。階段のぼるときなんて、ゾクゾク感のクレッシェンド状態。他にも、いろんな種類がありますし、エッセンスが同じであれば自由に創作しても構いません。あとは、こうしたくすぐり遊びのレパートリーがたくさんあるほうが好ましいので、いろいろ試してみてください。

■声かけの効果■(2002年4月20日)
 さあ、子どもが転んだりしたことをきっかけに泣き始めました。泣きやましたい、どうしよう。これまでに言ってきましたように、普段から関係づくりをしておいた「くすぐり」を試してみましょう。子どもの泣きやむ気配が感じられるまでは、のべつまくなし笑わせてみましょう。このとき、くすぐりを始める手がかりとなっている声かけも連発しながらくすぐります。子どもが笑い出すまで色んなバリエーションのくすぐり遊びを試すのです。ここで気をつけてほしいのは、子どもが調子良く笑い始めると「ほ〜ら、いい子ね、もう泣かないでね」などと言わないこと。転んだことや泣いていたことを思い出させる声かけは逆効果になることがあるのです。子どもが笑い出したら、「あ〜、おもしろいね〜、くすぐったいね〜、もういっぺんいくぞ〜」という声かけのほうが望ましいのです。この手続きさえ上手くできれば、子どもは涙の跡を残しながらも、ときどき「ヒック、ヒック」と泣きしゃっくりをしながらも、元のご機嫌さん状態になって遊び出すでしょう。

■発達障害をもつ子どもへの応用■(2002年5月14日)
 これまで、大人と子どもとの間に、くすぐり遊びの関係を形成しておくことの重要性を述べてきました。さて、これから自閉性障害(自閉症)と診断される発達障害をもつ子どもへの適用方法について述べたいと思います。自閉症の子どもは、発語の有無にかかわらず、対人関係においてその症状が顕著にあらわれます。簡単に言えば、他者とのかかわりを上手く持つことができない子どもたちです。要求場面以外では、なかなか子どもの方から他者にかかわりを求めてくることがありません。そこで、くすぐり遊びです。普通にくすぐり遊びをやれば、健常児では喜々として盛り上がるのに、自閉症児では手を引っ込めたり体を硬直させたり拒否してしまいます。養育者や教師からすれば、「せっかくかかわろうとしたのに…」と失望し、「そんなに嫌がるのなら何も無理させなくても…」と考えてしまうかもしれません。子どもがすでに大きくなってしまっているのなら、こういう考えも分かります。でも、幼児期や児童期においては「慣れ」によって十分に乗り越えられるものでもあるのです。たとえば、小さいときにタートルネックのセーターは首がチクチクして嫌だったのに、青年期にはむしろ好んで着るようになることなんてよくあることです。私は自閉症の子どもにも「慣れ」を経験させることは十分可能だという手応えを得ています。大人のイメージで「嫌なことに慣れさせる」と考えると違和感があるかもしれませんが、私のイメージはちょっと違います。「最初はすごく嫌だったかもしれないが、慣れを通していつの間にかまあそれほど嫌でもないかな程度」になる可能性を探るのです。次回、具体的な方法について述べたいと思います。

■子どもから手を伸ばすようにするためのテクニック■(2002年6月17日)
 自閉症の子どもによくみられる触覚的な過敏反応は、個人差はあれども軽減できるという実感を私はもっています。たとえば、大人から子どもの手を掴んだりするととても嫌がる子どもがいるとします。ここで具体的な目標となるのは、子どもが自ら大人に手を差し出すこととなるのですが、ここにもちょっとしたテクニックがあるのです。最初は、自分から手を出してこないので大人がほんの少しだけ軽く子どもの手を握るしかありません。重要なのはここからです。大人が子どもの好きな物を管理しておき、一つずつ渡していくようにします。子どもは当然、その好きな物が欲しいので手を伸ばしてきます。そこで、大人から少しだけ子どもの手を握るようにして握手の形をとります。握手した直後、子どもにその好きな物を一つ渡します。これを繰り返していく中で、子どもが自ら手を差し出してこれるよう、大人から子どもの手を握るのをやめて、子どもの手の近くに大人の手を開くだけで待ちます。子どもが自分から手を差し出すようになれば、大人の差し出す手を少しずつ遠くしていきます。最後には、子どもから自発的に大人に握手を求めるようになります。この過程で、握手する時間を少しずつ延ばしたり、くすぐりを入れたりして、どんどん発展させていくのです。握手した手をそのままブラブラ、反対の手を出させてブラブラ。触覚過敏をもつ子どもがこの目標をクリアしておけば、後々になってかなり役立ってくるように思います。






 



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