奥田研究室 / Kenji Okuda's Lab
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コラム


ABA日記
ABAソリューションの活動など、日記風にご覧いただけます。
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ABAソリューションの活動 No.1


■ABAの専門家とは?
 ABAの専門家というのは、単に行動分析学の知識があるだけでは何の役にも立ちません。目の前に与えられた課題を効率よく解決に向けて導いていけるだけの手だてが求められているのであり、最低限それに応えられなければならないのです。無発語で発声レベルの低い子どもに対してまず何から始めるか、発話がみられるようになったら次に何をすべきか、問題行動ばかりしている子どもにはどう対処すればよいかなど、さまざまなニーズに応じていくことが必要です。これらの解決に役立つのであれば、活用できるものは何でも活用します。そのためには、学校や幼・保、医療機関などとの調整ができることも、ABAの専門家に求められる資質であるといえるでしょう。

 

 

■ABAのサービスを受けることの難しさ
  わが国では、これらのようにすべての問題に対して解決のためのプログラムを作成できるような人間は極めて限られています。専門家がいたとしても、そのほとんどが何らかの教育機関での仕事を中心としているため、直接的にABAのサービスを専門家から受けられる家庭はごくわずかというのが現状でしょう。また、大学は教育機関であるため大学院生の研修対象あるいは研究対象となることが少なくありません。
  ABAの専門家から直接的なサービスを受けられるようになることは、これからもなかなかありえないことでしょう。日本にはABAサービスを提供する企業がないので、アメリカのようにプロフェッショナルでなくてセミプロでもいいから、ABAサービスを提供していけるようなシステムを構築していく必要があります。これは、プロフェッショナルがセミプロ数人に対してスーパーバイズを行い、セミプロたちが大学院生を指導するようなシステムです。ABAソリューションでは、こうしたシステム構築を試験的にでも作っていこうと目指していますが、実際にはまだまだプロフェッショナル(会社でいえば社長、研究所でいえば研究所長)が直接療育を担当している状況です。限られた方々にしかABAソリューションのサービスを提供できないというのが現状です。

 

 

■ABA情報■(2003年5月25日)
 国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis)の年次大会がサンフランシスコにて開催されています。この学会はその頭文字からABA(アバ)と呼ばれています。ABA(応用行動分析学)と同じ綴りですが、応用行動分析学の場合はABA(エー・ビー・エー)と読んで使い分けています。今、この学会に初めて参加しに来ていて、おまけにポスター発表まで行います。「心の理論」を細かく分析した課題を自閉症児に指導した研究で、アメリカの行動分析学会ではまだ始まったばかりのトピックになるようです。この学会には、アメリカの行動療法プログラムを提供する企業数社が展示会を開いています。ロヴァースカンパニーみたいな企業がたくさんあるのです。とにかく、アメリカでは行動療法プログラムを幅広く提供するためのシステムが整備されているところが特徴的です。私が日本で年間延べ1000件ほどの個別指導を続けているというと、ロヴァース社の社員が「冗談でしょ。信じられない!!」などと驚いていました。「大学で働いてるのに、なぜ学生を使わないの?」とも。それはともかく、日本にも高いニーズがあるわけですから、今後さまざまな療育サービス企業が出てくることでしょう。
  ただし、気をつけなければならないのは、海外のものをそのまま輸入して使用すると失敗するということです。日本の教育現場や医療サービスなどの社会システムや家庭生活の文化などにフィットしたプログラムが成功の秘訣なのです。海外のものを輸入する場合、外車と同じく日本用にアレンジしておく必要があるでしょう。また、「うちが本家本元だ」「あれは本物ではない」などという批判がいとも容易に起こってしまうことが予想されますが、そういう考え方は療育効果をぬきにした、輸入代理店のメンツとかの問題であって、無意味です。表千家でも裏千家でもそれぞれがお茶を愉しむように、輸入したプログラムが表だろうが裏だろうが、元祖だろうが本家だろうが、とにかくそのプログラムが子どもや家庭にきちんとしたサービスを提供できるかどうかが肝心なのです。
  ABAソリューションが提供するプログラムは、現在のところ、純・国産であるといえます。一方で、アメリカの使えるところはこれまでも取り入れてきましたし、これからも取り入れていこうと考えています。

 

 

■ABA情報■(2003年5月26日)
 前日に引き続き、アメリカの療育サービス企業のブースまわりをしてきました。顕著な療育効果が示されたロヴァースらの研究だけでなく、他にもたくさんの療育サービス企業や研究機関があり、全米各地にサービスを展開しています。ある企業のディレクターと話をしたのですが、そこでは''research-based services''という言葉が用いられていました。これは、研究のためのサービスという意味ではなく、「科学的な研究に裏打ちされたサービス」という意味です。ABAソリューションも''research-based''なプログラムを提供しているという点でまったく同感です。ただし、残念ながら物理的な制約や制度的な整備の遅れのためにごくわずかな家庭にしか提供できていません。
  さて、私の発表には予想をはるかに超える方々が集まってくれました。用意していた資料もすぐにsold out。そろそろ「心の理論」関連の研究にアメリカも興味を示すようになったのでしょう。そして、世界的にも著名な心理学の先生に「アメリカでこんなに複雑で緻密な実験研究をやれる人はいないんだよ、すばらしい」などと持ち上げられました。並んで写真を撮らせてもらって、ちょっとミーハーしちゃいました。

 

 

■ABA情報■(2003年6月3日)
 「ロゼッタストーン」という雑誌に、自閉症児に対するABAアプローチが紹介されているということで、ある会員さんが一冊送ってきてくれました。目を通してみますとなかなか好意的で、親御さんにとっても励みになるだろうという印象を持ちました。特に「個別の集中教育で子どものできることが増える」ということを強調している点が評価できます。なぜなら、これまで長年にわたって「健常児集団に入れさえすればよくなる」という理念先行の空気が蔓延していたからです。この考え方は今もなお、親・教師の中で支配的なのかもしれません。こと、自閉症と診断される幼児においては、集団場面での指示の入りにくさや、対人接触過敏をもつとするならば、いきなり集団に入れることは子ども自身にとって負担が大きすぎる可能性があります。自閉症と診断された幼児に対して、早期の個別指導を実施した場合、ことば、コミュニケーションなどの面で大きな改善を示すことが科学的なデータによって示されています。もちろん、ABAアプローチでは集団適応や地域参加も視野に入れており、こちらの支援についても数多くの成果が示されています。つまり、ABAアプローチは子どもに必要なことを必要な時期に提供していくわけです。ことばの訓練が必要であればそのために最適な状況やプログラムを選択しますし、日常生活での適応が必要な場合ならばそのために最適な環境調整を行うわけです。
  さて、「ロゼッタストーン」の中での誤りを一つ。ほうびに関する解説ですが、これについてはいくつかの学習心理学の教科書でさえ同じ間違いをしています。「ある行動にほうびがあれば、その行動の頻度は増えていく」などとありますが、これは誤った解釈です。正確には「ある行動に、何らかの刺激や出来事が与えられたことで、その行動の頻度が増えた場合、その刺激や出来事がその子どもにとってほうびであったといえる」ということです。つまり、ほうびかどうかは後から分かることなのです。例えば、母親の注意をひきたい子どもが悪ふざけをした際、母親が子どもを叱ったけれども、悪ふざけが増えることがあります。その場合、この子にとっては、母親に叱られることがほうびだったといえるのです。他にも、お母さんが「ほめてるのに、やろうとしない」「チョコをあげても、やらない」などと呟くこともありますが、多くの場合、これらは子どもにとってほうびになっていない可能性があるのです。繰り返しますが、「ほうびをあげれば行動が増える」と考えるのは間違いです。上記の誤解があると(実際、よくあるのですが)、子どもの困った行動を知らず知らずのうちに増やしてしまうことになってしまうのです。ほうびをめぐってはまだ他にも誤解がありますが、とりあえず上記のことだけは押さえておいて下さい。子育て大学もご参照下さい。






 



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